GreenKeeper’s Voice 特別編 2015-11

国内男子ツアー唯一の
高麗グリーンを磨き上げた達人キーパーの執念

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アンドリュー・マクダニエル氏(37歳)

福高観光開発株式会社 コース管理部課長
グリーンキーパー 米国出身 ミシシッピ大学農学部卒業
日本人の奥様と3歳のお子様と共に日本の生活を送っている

3年前、福岡県の芥屋ゴルフ倶楽部に一人の米国人キーパー、アンドリュー・マクダニエル氏が着任した。芥屋ゴルフ倶楽部では「KBCオーガスタゴルフトーナメント」の開催コースとして、11回大会から33年間に渡り、高麗グリーンでの大会としてしられている。高麗ではコンディションの良い高速グリーンは困難と言われている中で、当時の大会で8~9フィートだったスティンプを今や11フィートを超える高速グリーンに変貌させてみせた。その背景にある工夫と苦労に迫ってみたい。

― 芥屋ゴルフ倶楽部に来られた経緯は

 私が大学生の時に日本の千葉県のゴルフ場でインターンシップを経験しました。そして大学へ戻って卒業してから、1~2年くらいの気持ちで日本に来て外注でコース管理をする会社へ入社しました。その後会社を替え、コース
管理の傍ら営業を担当する事もありました。出張も多く、いろいろなゴルフ場も見ました。ただ、やはり私は芝をやりたいという思いが強くなってきた頃に芥屋GCの話をいただきました。大会も開催しているし、グリーンは高麗であると。正直なところ、高麗は経験が無かったのですが何事も経験だと思い、取り組んでみることにしました。

昨年のデータなどを参考にしながらグリーンを最高の状態に仕上げた。芽数もみっちりと生えており選手、関係者からも高い評価を得ている

昨年のデータなどを参考にしながらグリーンを最高の状態に仕上げた。芽数もみっちりと生えており選手、関係者からも高い評価を得ている

― 今年の大会が始まる前はどのようなコースコンディションにしたいと考えていましたか

 芥屋GCは恐らくいろいろな大会がある中ではスコアが出やすい。ですからしっかりしたラフと、硬めで転がるグリーンを作る事で本当に強い選手が優勝できるようにしなければなりません。グリーンについては去年、一昨年と、大会の翌週に一番コンディションが良くなった。多分、大会週は刈り込みの数や転圧するなど大会のための整備を行っていたために翌週のコンディションが良くなったのではないかと。
それで今年は大会週の前から刈り込みの回数を増やして、転圧などの作業もやりました。そのお蔭で今年の方が良くなったのだと思います。

 ラフもロータリーモアを使って90ミリとか100ミリに揃えるのですが、これは前週に刈っていたらちょっと伸びて寝てしまいます。そうなるとボールが上に乗っかってしまう。それで今年はプロアマの後に三台でガーっと刈りました。そうしたら芝が立って、ボールがスポッと入るようになりました。こうしてフェアウエイキープが条件になるようにしました。

ロータリーモアを使いラフの長さを調節する

ロータリーモアを使いラフの長さを調節する

― 大会前のグリーンコンディション作りの作業はどのようなものですか

 グリーンの作業は大体5月くらいからバチ刈り(バーチカット)をやって、砂を入れて。それが回復してからまたやってと。大会前は4週間前にはそうした作業は止めて刈り込みだけで大会に向かっていきます。うちは高さは年間3ミリで、これまでは大会前週からは少しずつ下げていたのですが、今年は8月1日から2.9ミリ、2.8、2.7、2.6と下げて、前週の月曜日からは2.6ミリをキープしました。

― 芥屋の高速グリーンを作るにあたって必要なファクターとはなんでしょう

 まず元気な芝をつくらないと何も作業は進みません。元気な芝生で伸びない芝生。高麗は伸びるのが早く、特に8月は早い。それに葉が長くなると太くなります。それで抑制剤を撒いて、バチ刈りをして、新芽が出てということを繰り返すことで芝生が細かくなって芽が詰まってきます。それと肥料を一発では無く、安定した伸び方で波が無いように毎週少しずつ撒きます。そうしておいて次は刈り込みです。去年までは大会の前の週から朝と夕方の2回、刈り込みをしたのですが、今年は8月に入ってからは毎日、朝と夕方の2回、刈り込みをしました。それでだんだんと面が揃って。今年、良かった点だったかと思います。

― ラフについてはどこに行っても均一になるようにされているとか

 そうです。ただ種類もティフトンや野芝のところもあるので仕方がない点もありますが、基本的に同じように均一に。それはアンフェアにならないようにという考えからです。簡単ではありませんが。特に大会の時期はお客さんも多いし、コースもクローズはしません。お客さんがいる時に作業をしなければなりません。お客さんが多くてコースに入れないなどとなれば、朝と夕方しか作業に入れない。そうした中で仕上げていくのは本当に難しい。

― 今年の大会を終えて、グリーンキーパーとしてどのような感想を持ちましたか

 ひとつは選手、関係者の評判を聞くと、皆、良かったと。とにかく選手に喜んでもらえたようで良かった。来年はこれ以上の仕上がりにするにはどうすればいいかなと悩んでいます(笑)。毎年毎年ステップアップしないといけませんから、今年も良かったけれど来年、今年以上に仕上げるにはどうしたら良いかということをこれから考えないといけません。