GTPA海外トーナメント研修

第147回全英オープン(カーヌスティGL)視察

ゴルフの大会としては世界最古の歴史を誇る全英オープン。グランドスラムの一角として、国際的にも最も名高いゴルフトーナメントの一つだ。この歴史あるメジャートーナメントがどのように運営されているかについて、大会開催中に「GTPA海外トーナメント研修」に参加した総勢9名が視察を行った。

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500人に対応できる巨大メディアセンター

第147回となった今年の全英オープンの舞台は、スコットランド東部のカーヌスティゴルフリンクス。2007年以来11年ぶりの開催だった。

試合は35歳のフランチェスコ・モリナリ選手が、通算8アンダーの276ストロークでイタリア勢初のメジャー制覇を果たした。復活したタイガー・ウッズ選手の活躍などもあり、大会は大きな盛り上がりを見せ、幕を閉じた。その全英オープンは、どのようなコンセプトに基づき、どのような施設を配し、どのように運営されているのだろうか。

R&Aメディア担当のマイク・ウッドコック氏Mike Woodcock(R&A Director of Communications)にまず案内されたのは、巨大なメディアセンターだ。

前方には大きなモニターが設置されているメディアセンター

前方には大きなモニターが設置されているメディアセンター

世界から集まる500人ほどのメディアに対応できるスペースで、大きなスクリーンとスコアが見られ、各テーブルにもモニターが設置されている。後方にはラジオ関係のブースがあり、試合経過はラジオでも放送している。各国に時差があるので、メディアセンターは24時間対応で開放している。

メインのインタビュールームでは、大会前に12人ほどの注目選手のインタビューが行われた。大会中はその日のリーダーのインタビューを行う。タイガー・ウッズ選手が来るときは100席ほどが満席になる。他に、注目選手を短くインタビューするサテライトエリアもある。インタビュー内容を記したコメントシートは、以前は紙で配られていたが今はウェブサイトからダウンロードできるようになっている。

カメラマン用のスペースは100人分くらいあるが、コース内にもネットにつなげられる施設があり、そこから画像などを海外に送ることができる。そのため、撮影後にメディアセンターに戻って来なくてもコース内から直接配信できるようになった。Wi-Fiもつながり、アプリも使用できるので、メディアもギャラリーも、どの選手がどこにいるかなどをすぐに確認できる。

ギャラリーが、モバイルで個人的に撮った写真をネット上にアップすることについては、「基本的にプレーは撮らないでほしい」というスタンス。過去には携帯電話の使用を禁止していたが、2013年からは呼び出し音が鳴らないように、そしてイヤホンを付けていれば特に問題は起きていない。現在、海外で携帯が使えない試合はマスターズだけだ。選手個人のSNSに対しても、特に制限していない。選手はこの大会に出ることを目標にきているので、問題になる発信はまずない。

試合中の全ボールを収録することが可能

E.T.P.スチュアート・コック氏Stuart Cook(Senior Technical Producer/European Tour Productions)が案内してくれたのはTVコンパウンド。コース内には、バンカー内のカメラも含めて105台のカメラがある。その運営は全てヨーロピアンツアープロダクションに任されている。ヨーロピアンツアープロダクションのスタッフは600人。他にBBCやゴルフチャンネル・スカイ・世界各国のテレビクルーなども含めると、ここで1700人のスタッフが動いていることになる。全英オープンは特別で、通常のヨーロピアンツアーなら170人くらいだという。

TV放送は生中継だが、それ以外のシーンも録画して番組の途中に入れ込む作業もある。ゴルフは同時進行で多くのボールを追わなければならないため多くのカメラが必要なのだ。

基本的には、その日のメインの組を決めてフォローするが、他で行われているプレーも撮影し、必要に応じて入れ込んだりする。つまり、全組、全ボール、全ティーからグリーンまで撮っているということになる。

この映像の価値は10ミリオンダラー、つまり約11億円の価値があるという。

パトロンのための最高のホスピタリティ

R&Aマイク・テイト氏Mike Tate(Executive Director of Business Affairs)に案内されたのはパトロンパビリオン。

パトロンパビリオンは、パトロンと呼ばれる特別スポンサー7社のためのホスピタリティーテントのこと。スポンサーごとに2階建てになっており、1階はフルサービスのレストラン、2階はリラックスした雰囲気でトーナメントを観戦できるスペースだ。1階・2階とも100人ほどを収容できる広さだ。

コースをセットアップする時、このパビリオンのポジションは最重要になる。そのため、これをどこに置くかを真っ先に決めることになる。前年の9月からこういうパビリオンを作りますよという提案をし、それに基づいて各スポンサーが建物内のレイアウトを決め、コーポレートカラーなどをふまえてデザインする。

開催年の2月には会場で出す食事やワインなどの試食会を行い、5月に建物が建てられる。建設に5ヶ月、撤去に5週間ほどかかるという。

公平を期すため、7社の場所は毎年ローテーションしている。やはり18番グリーンの側が人気のためだ。開催コースによっては、18番サイドに建てることが難しい会場もあるようだ。

今大会では、木曜日にトム・ワトソンが各スポンサーをサプライズで訪れた。これはR&Aが依頼したもの。自社の所属選手などが訪れることはよくあるようだ。

その他、7社のゲストが利用できる合同の大型テントが13番に一つある。コースに行って観戦したい人は、ここを利用することもできるわけだ。

さまざまな試みに取り組むグッズショップ

R&Aジェニー・ブラウン氏Jenny Brown(Merchandise Manager)に説明を受けたのは、全英オープンのマーチャンダイジング(グッズショップ)について。

グッズショップは、場所を変えたり、2カ所にしたりする場合もあるが、いずれの場合も必ずギャラリーが入場した時に通る場所に作る。今大会では、導線のいい1カ所に作られた。

ショップ内では150人のスタッフが働き、全体を5人でマネージメントしている。スタッフへの応募は250〜260人あった。特典はないが、1日6時間の労働でゴルフを見られるということから応募が多いようだ。

ショップへ入ってすぐ横にあるのは、メインのアパレルパートナー「ヒューゴ・ボス」のブース。ブース内には、過去カーヌスティで優勝した選手の写真が飾られ、そのスコアも紹介されている。ヒューゴ・ボスでは、4人の選手をフューチャーし、日ごとに違ったウェアを着てプレーしてもらっている。

キャップやポロシャツなどに使うカラーは統一されて商品が作られる。大会のロゴ入りグッズはもちろん、毎年売るコレクションやキッズコレクション、カジュアルコレクションなど、さまざまなバリエーションが用意されていた。

商品タグには「若い世代を育てるために販売しています」といった趣旨の言葉が必ず書いてあり、R&Aの活動に役立てる為の活動であることが示されている。

今はほぼ会場内とオンラインでのみの販売だが、今後は空港や日本のショップなどでも販売したい方針だとも語る。

ショップでは、ネームタグやキャップにその場で名前を入れてくれるサービスを行っていた。ショップの出口には荷物を預けることができるエリア、発送できるエリアもあった。また、練習場のサインエリアの近くにはフラッグなどを販売するショップも用意。ギャラリーはそこでフラッグを購入し、すぐに選手からサインをもらえるようになっている。

オリジナルグッズは、開催コースごとの特徴に基づいてデザインされることが多い。来年のポートラッシュにはカラメティコーナーという名物ホールがあり、それに基づき多くのデザインが準備状態にある。

2021年、150回大会となるセントアンドリュースでは、すでに新しいショップがオープンし、記念グッズも販売を始めている。

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他にも充実の施設・システムが満載

R&Aジョニー・コール・ハミルトン氏 JohnnieCole-Hamilton (Executive Director of Championships)には、全英オープンにおける他の施設やシステムについて話を聞いた。ここでその一端を紹介する。

● R&Aアフィリエイト

R&Aの部屋で、壁面にはパネルでR&Aの取り組みを紹介し、加えて持ち帰り可の冊子にまとめて紹介もしている。

● チケット

午後4時から入場できるチケット(トワイライトチケット)や土日のチケットがある。トワイライトチケットは3500枚限定にし、地元の人のために用意する。枚数を制限しているため、すぐに売り切れる。

● 安全対策

地元の警察と連携を取ることによって事前に情報をもらい、もしテロ対策などの情報があればそれに対応する。雷などの情報は、会場内に天気予報のチームがあり、そこから会場内17の速報板に情報を流して選手、キャディ、ギャラリーへの避難指示を出す。

● Wi-Fi

2009年から、コース内に光ファイバーを這わせ、デジタル化を進めている。2014年からは、それまで手動だったリーディングボードをほぼデジタルに変えた。今2基だけマニュアルのボードを残してあるが、それはシンボル的なものだ。

● 選手専用エリア

今回、選手がさまざまに過ごせる選手専用エリアを1カ所に集中して作った。その施設は大会後、クラブハウスとして活用される。

通常営業時の打撃練習場が少し遠いこともあり、この施設内には、雨の日なども使えるシュミレーターの練習場を作った。全部で7打席あり、イギリスでは最新の施設だ。

ジムには、ゴルフ専門のフィットネス機器を用意。選手と選手のトレーナーの意見を取り入れ、彼らのニーズに合うように作った。全英オープンでこの施設を作ったのは2年目になり、ベストな施設となった。

ダイニングには栄養士を常駐させ、十分に栄養がとれるようなメニューを揃えている。また、世界中の選手のためにインターナショナルな料理を用意。もちろん日本食もある。選手ラウンジは、ダイニングよりもさらにリラックスできる空間になっている。

世界最高峰の施設やシステムで運営される全英オープン。上記のような手法を参考にしながら、日本のゴルフトーナメントのクオリティを向上させていきたいものである。

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