GTPAトーナメント放送委員会レポート

GTPAトーナメント放送委員会レポート
「ゴルフ新ルールにおける放送対応について」

2019年2月27日、GTPAトーナメント放送委員会が開催された。日本ゴルフ協会(JGA)から山中博史専務理事、市村元規則統括部長を迎え、今年から施行されたゴルフ新ルールの正しい理解と、トーナメント放送時にどう対応するかについてのセミナーが行われた。出席した放送関係者たちは、新ルールへの理解を深め、今季のトーナメント中継の品質向上を図った。

新ルール施行に合わせ
放送関係者に正しい理解を

新ルールを正しく理解するため約30名の放送関係者が出席した

新ルールを正しく理解するため約30名の
放送関係者が出席した

2019年1月1日より、ゴルフの新しいルールがスタートした。欧米やオーストラリア、アジア諸国のプロトーナメントでは、一足先に新しいゴルフ規則の下でのプレーが行われている。今回のセミナーは国内ツアーの開幕直前というタイミングで行われ、放送関係者に新ルールへの理解を深めてもらうと同時に、これからのトーナメントをどのように見せていくかのヒントにもなる、今季のトーナメント中継にとって重要なテーマとなった。

セミナーの冒頭、JGAの山中博史専務理事より挨拶があった。

「我々が新規則を普及させようとしても、ゴルファーに最も大きな影響力があるのは、テレビというメディアを通じて映し出されたプロトーナメントで起こったこと。そこで見聞きしたことが、正しいものも間違っているものもゴルファーに伝わります。本来のルール改定の意味もわからず上辺だけとらえて運用し、違った方向にいってしまったことも実際に起きています。単なるゴルフ規則の変更ということではなく、改定に至った本質をアナウンサーや解説者、レポーターの方々に正しく理解していただきたい」

アマチュアゴルファーへの影響力を考えれば、放送関係者も新ルールの正しい理解が必要だ。トーナメント中継のクオリティを高めるために必要不可欠なテーマということもあり、参加者は一様に真剣な面持ちで講師の話に耳を傾けた。

ゴルフルールは常に時代に
合わせて変化し続けてきた

JGA市村元規則統括部長

JGA市村元規則統括部長

具体的な新ルールの内容については、JGAの市村元規則統括部長が解説した。旗竿の規則、プレーヤーの援助となるキャディーについて、救済措置に関する救済エリアの決定方法やドロップの方法など、トーナメント放送で誤解されやすい例や、よく間違えられる点を実際のプレーシーンなどの動画を交えながら解説された。

市村氏は今回の新ルールの大方針について、次のように説明した。

「今回の新規則への変更について、メディアなどはスロープレー防止のための変更などと言うことが多いようです。しかし、決してそれだけが理由ではありません。今回の規則変更は1984年以来35年ぶりの大きな変更ですが、ゴルフの規則は “常に時代に合ったものにしよう”という考えで変更され続けてきています。スロープレーだけでなく、全体として今の時代に合った規則になっていることを理解してほしいと思います」

新ルールは、ゴルフをよりわかりやすく簡単にプレーできるものとし、新しくゴルフを始めようという人にとっても簡単に理解できるように変更されている。同じような状況からはできるだけ同じ措置でプレーできるようにしているし、偶然起こったことに対してはむやみに罰を与えないなど、これまでになくシンプルになっている。

放送時のルール解説では、なぜこのように変わったかという本質を、一般アマチュアゴルファーに丁寧に説明していくことが求められる。

テレビの影響力を考えれば
放送関係者の責任は重大

市村氏からは、テレビのトーナメント中継で起こりうる問題点への指摘もあった。

「テレビで中継をしていると視聴者からの問い合わせやクレームがよくあります。ボールが動いたのではないか。リプレースの場所が違うのではないか。しかし、視聴者はレフェリーではないし、ルールを誤解している場合もあります」

映像がより鮮明になった現在、トーナメント中継の現場や肉眼では気づかなくても、視聴者がテレビ画面で気づくこともあるかもしれない。しかし、視聴者の声で運営側が振り回されるようなことがあってはならない。今シーズン、新しいルールが適用されることで不安定な状況も増えるかもしれないが、ゴルフゲームの「裁定権」はレフェリーと委員会にあることを明確にし、ルールを正しく理解することで、毅然とした態度も生まれるだろう。

出席したゴルフ解説者の杉澤伸章氏は、「細かいことまで詳しく教えていただき、とても勉強になりました。表現方法も解りやすかったので解説時に使わせていただきます。我々の発した言葉の影響力は大きく、とても責任のある立場なので、多くの人にゴルフを楽しんでもらうためにルールをしっかりとお伝えできるようにしたいです」と受講の感想を語った。

新しいシーズン、そして新ルールによる大きな変革期に向けて、放送関係者もあいまいな認識を正すいい機会になったのではないだろうか。

GTPAトーナメント放送委員会とは

男女ゴルフトーナメントを製作・著作している全国の放送局の番組制作責任者が参加し、トーナメント放送の価値向上を基本目標に掲げ、課題の解決、情報共有、リスク管理を行うことで中継・番組制作のレベルの向上を目指している。具体的にはトーナメント中継制作レベルの向上、トーナメントの編成の考え方に関する検討、インターネット事業者などへの番組の二次利用についての協議及びガイドラインの作成、その他トーナメント中継に関わる事項についての対応などを行なっている。