第5回「安全対策セミナー」開催
GTPA(一般社団法人 日本ゴルフトーナメント振興協会)では、これまでゴルフトーナメントに関わる様々な「安全対策」について、啓蒙活動や講演セミナーを開催してきました。第5回目となる安全対策セミナーはトーナメントを取り巻くリスクに対応する知識、知見を得ることを目的として、3つの視点から3部構成で開催しました。7月16日(木)にTKP赤坂駅カンファレンスセンターにて行ったセミナーの概略をお伝えします。
第1部「トラブル対処について」
ANAホールディングス株式会社
グループ総務・CSR部 参与
頼本 和也 氏
※元警視庁 組織犯罪対策部 部長
トラブルやアクシデント対策を講じる上では何も起らないという意識ではなく、最悪の事案を想定した諸対策の策定をしておくことをお願いします。
トーナメント開催の事前対策ポイントを3点挙げます。1つは駐車場を含めた大会会場の実査と危険箇所を毎回把握しておくこと。2つめは地元警察への訪問、説明と根回し。3つめは防犯カメラの設置です。この点は一番大きな事項で、事件の抑止や検挙、事故などが発生した時の事後検証として防犯カメラは今や必需品であり、それもダミーでは無く本物のカメラの設置が必要です。
実際にトラブルが発生した際の対処として4点。1つめは突発事案の発生時には現場だけではなく必ず大会本部が情報を一元管理できる態勢を必ず講じておくこと。2つめは暴力団等からのクレーム対処。昨今は暴力団より一般のクレーマーの方がタチの悪いケースがありますが、いずれにせよ大騒ぎをされる前に事前から速やかに案内できる別室を用意しておき、別室には訴訟になる可能性を踏まえて録音や録画ができる準備をしておくことが必要です。またそうした際には、安易に要求を受け入れたり土下座などはせず、毅然とした態度で対応し、いざとなれば警察を交えて話を進められるよう根回しをしておくようにして下さい。3つめとしてダフ屋対策ですが、ダフ屋行為には被害者が居ないため、検挙するには立ち入り禁止看板などの設置や警備員による警戒で抑止に努めること。進入があった場合には目的外で侵入したという軽犯罪法なりで後に検挙できる可能性があります。最後に選手へのストーカー行為ですが、少しでも懸念されるようであればすぐに警察に相談して下さい。
第2部「落雷等緊急時のギャラリー避難誘導について」
ヨネックスレディス大会実行副委員長
ヨネックス株式会社 執行役員
山本 美雄 氏
過去に落雷や風雨等によって2時間の中断があり、試合の最終日で競技成立が危ぶまれたという経験があります。その時はいきなり雷雲が湧き、雨と雷が一気に来ました。その状況からパニックに入ってしまった反省があります。
まず、パニックに入った要因は当時の緊急時マニュアルでは非常に大雑把な決め事しかできておらず、我々事務局が実際に起きた時のことをイメージできていなかったことがあります。
その時の数々の反省点を踏まえてマニュアルも改善を重ね、現在では組織図中に非常事態対策本部を置き、各部門の責任者名を入れ、その下で動く現場責任者名も入れ、各担当が何をいつどうするか手順表も作成し細かく明確に対応できるようにしました。
今の緊急対応については第1段階として警報、注意報発令というところを起点として、第2警戒態勢としては、天候状況によって非常事態対策本部のメンバーを招集する。第3段階が、50㎞圏内に落雷した時。この時点において緊急車両の配置、ギャラリーゲート付近にギャラリーバスを集めていく。最終警戒態勢が20㎞圏内に落雷した時に緊急時専用トランシーバー回線の確認等々、トランシーバーが濡れてもいいようにビニールをかけていくだとか、そうした具体的なことをやりましょうと決めています。ただし、こうしたことを決めていても結局、現場の人間にまでこのイメージが伝わっていなければ何もならないということを身に染みていますので、5回目の大会の時からは毎週水曜日に非常事態対策本部のメンバー他、約40名になりますが、オールスタッフで1時間くらいの緊急ミーティングを毎回行っております。とにかく強調しているのは、こうなった時に誰がどこで動くという、担当者の動くイメージを具体的に伝えるようにするということです。
第3部「救急対処について」
東京消防庁 救急部救急指導課
救急普及係長
立川 満 氏
私が今、担当している業務は広く都民に応急手当の普及を図り、一人でも多くの方を救命する救命術を向上することをひとつの目標としています。
現在119番通報を受けて現場に救急車が到着するまでの時間が約8分。この8分の間に、いかに現場に居合わせた方が応急手当を行えるかで、その人が助かるかどうかに繋がるということを改めて認識して下さい。一般の方々にできることは異物除去、搬送法、体位管理、止血法、人口呼吸、心臓マッサージ、固定法などがあります。
応急手当の目的は3つあります。1点目は当たり前ですが救命を第一としています。2点目は怪我などの状態を現在以上に悪化させないということ。3点目は苦痛の軽減、その怪我人の方のメンタルの部分までもケアをするということが非常に大事になってきます。実際にゴルフ場で怪我なり病気なりされた方の対応をされる場合ですが、まずは処置をする前に傷病者を対応する場所が安全なのか確認します。そして意識の確認、呼吸の有無、無ければ心肺停止の状態だということで心臓マッサージ、人工呼吸、AEDを用いた心肺蘇生の措置を救急車が到着するまでの間に行ってください。AEDの使用については、電源を入れると必ず音声メッセージが流れますので、基本的には音声メッセージに従って使用すれば簡単に扱うことができます。応急手当の部分などは、やはり実習が大事です。是非、実習をしていただきたいと思います。最後に施設内で起きた事故については場合によっては大会運営スタッフの責任を問われることにもなりかねないというところを改めて意識していただきたいと思います。そして、応急手当の必要性を認識していただいて、最終的には訓練までを行っていただきたいと思います。