トーナメント事業委員会セミナー

GTPAトーナメント事業委員会セミナー
「SDGs」と「防災」をテーマに今回も活況

ゴルフトーナメントの振興・発展や、安全対策への啓蒙活動の一環として、「GTPAトーナメント事業委員会セミナー」が、6月19日、都内で開催された。このセミナーには、約80名のトーナメント関係者が参加。第1部は国際的な啓蒙活動であるSDGsを、そして第2部はゴルフトーナメントにおける防災への取り組みをテーマとし、それぞれ専門家の講演が行われた。

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第1部 SDGsとコミュニケーション

国際社会が持続していくために国連が採択した共通開発目標

(株)博報堂DYホールディングス グループ広報・IR室 CSRグループ 推進担当部長 川廷 昌弘

(株)博報堂DYホールディングス
グループ広報・IR室 CSRグループ 推進担当部長
川廷 昌弘

第1部で演壇に立ったのは、株式会社博報堂DYホールディングス グループ広報・IR室CSRグループの川廷昌弘推進担当部長。川廷氏は現在、環境省や神奈川県など、多くの団体でSDGsの推進に尽力している。今回の講演では、SDGsとは何かを丁寧に説明。後半には、ゴルフトーナメントでの取り組みにも触れ、今後のSDGs推進を呼びかけた。

SDGsとは「Sustainable Development Goals」の略称で、2015年に国際連合で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を表す。国際社会が持続可能な開発を実現するための具体的な方針として、貧困、飢餓と食料、水と衛生、教育、ジェンダー、消費と生産、気候変動、生物多様性など17の目標とそのゴールが示されているものだ。

国際社会が抱える問題は、これまで環境問題、社会問題、教育問題など、それぞれが分散し、非常に多岐にわたって解決の道が模索されてきた。しかし、それらは社会の中で密接につながっており、個々に対応しているのではなかなか解決に至らなかったことも事実だ。

「諸問題の解決に分散していたエネルギーを、一つの大きなフレームに収れんさせたものがSDGsの新しいところ。それぞれの議論は古くから行われてきたこと」と川廷氏は言う。

2015年に採択された国連のSDGsは「我々の世界を変革する」とうたわれ、その前文には「人間と地球を繁栄させるための行動計画である」「誰一人取り残さない」などと、SDGsの姿勢が表現されている。

川廷氏も、誰もが幸せになれる国際社会がゴールだと強調していた。

ゴルフトーナメントの取り組みも17の目標に当てはまる

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SDGsの17の目標は、それぞれカラフルなアイコンで表現されている。これは日本語にも翻訳され、例えば目標1「貧困をなくそう」、目標2「飢餓をゼロに」、目標6「安全な水とトイレを世界中に」、目標8「働きがいも 経済成長も」、目標10「人や国の不平等をなくそう」といった具合。目標は多岐にわたるが、いずれもわかりやすく簡潔な言葉で示されていて、子どもでも理解しやすい。

現在、SDGs未来都市&自治体SDGsモデル事業として、全国でおよそ30の自治体でさまざまな運動が進められている。例えば神奈川県では、浜に上がった鯨の胃の中からプラごみが見つかったことをきっかけに「かながわプラごみゼロ宣言」という運動がスタート。プラスチック製のストローやレジ袋の利用廃止・回収、プラごみの持ち帰りなどを呼びかけ、大きなムーブメントとなっている。

また、2018年、大企業経営者の59%にSDGsが定着しているとの調査結果が出た。今後は、民間からの取り組みも加速しそうだ。

「SDGsは、ビジネスの力で進める、地方創生で進める、そして若者やジェンダーの力で進めていくことが大切」と川廷氏は言う。

ゴルフトーナメントでの取り組みが、SDGs推進に役立っていることも紹介された。

ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープンでは、毎年選手が宮城県立こども病院を訪問。チャリティ活動でこれまでに2000万円を超える寄付をしてきた。これは目標3「すべての人に健康と福祉を」に通じる。また、男女11大会で行われている子供たちの「社会科見学」などは、目標4「質の高い教育をみんなに」を具現している。

他にもトーナメント会場で行われているゴミの分別などは目標12「つくる責任 つかう責任」に、CO2削減のためギャラリー車両の使用禁止した大会は、目標13「気候変動に具体的な対策を」に当てはまる。

川廷氏は「スポーツ界でさまざまな取り組みをすることは、この啓蒙活動を広めるインフルエンサーとして大きな役割を果たしてくれる。SDGsはこれからの社会をどうしたいか、どんな自分になりたいかを共有できるツール。うまく使いこなして、次世代に質の高いバトンを渡したい」と強調していた。

第2部 ゴルフトーナメントにおける防災への取り組み

地震大国・日本では関東大震災級も油断できない

綜合警備保障(株) 営業総括部 ブロードマーケット営業室 BCP担当、防災士 林 美紀

綜合警備保障(株) 営業総括部
ブロードマーケット営業室 BCP担当、防災士
林 美紀

第2部は、綜合警備保障株式会社 営業総括部 ブロードマーケット営業室 BCP担当の林美紀氏による防災に関する講演が行われた。防災士の資格も持つ林氏は、顧客のBCP(Business Continuity Plan)、防災マニュアルの策定支援を行うとともに、全国で防災講習会、防災訓練の講師などを数多く担当する防災のスペシャリストだ。

今回はトーナメント会場で地震が発生した場合にどうするか、ということが主なテーマだった。2016年の熊本地震など、ゴルフトーナメントを直撃した地震も記憶に新しいため、参加者も真剣な表情で聞き入っていた。

講演ではまず、日本がどれほど地震の多い国かを改めて気づかされるデータが示された。

世界で起こるマグニチュード6.0以上の地震の20%近くは日本で発生しており、過去130年間で20件、およそ6.5年に1回は発生しているとのこと。一方、関東では1923年の関東大震災以来100年近くも大きな地震が発生していないが、これで安心せず、むしろ発生の危険性が高まっていると認識すべきとの言葉もあった。

また、今後30年以内に想定される大きな地震として、東京湾北部地震(発生確率70%)、南海トラフ地震(同70〜90%)、南関東地震(関東大震災の再来型・同0〜2%)も示された。「阪神淡路大震災や熊本地震も発生確率は極めて低かった。発生確率が低くても油断できない」と、林氏は強調した。

トーナメントでは被害予測とギャラリー誘導がポイント

トーナメント開催中の地震への備えとして、「開催前の準備が大切」と、林氏は言う。

具体的には、地震が発生した場合の被害予測だ。クラブハウスなどの建物の耐震強度、急傾斜地などの土砂崩れによる危険性、津波の危険性などを十分に確認しておくことだ。自治体がつくるハザードマップなどを参考にするといいだろう。

トーナメント中に地震が発生した場合には、ギャラリーはじめ選手・関係者の安全確保手段(安全な場所への誘導や声かけなど)、中止の基準(どの程度の震度で中止するか、最終判断は誰がするかなど)、スタッフや関係者への伝達手段、ギャラリーへの対応(料金の払い戻し、避難場所への誘導、帰宅困難者への対応など)が大切だ。スタッフのギャラリーへの対応では、「たぶん大丈夫だと思います」といったあいまいな案内・誘導が大きな問題につながると指摘。本部とスタッフとの意思疎通の重要性を強調していた。

加えて、近年は帰宅困難者への対応も大きな課題となっており、ゴルフ場が被災した場合には周辺の道路状況など、より広範囲の情報収集が必要との話もあった。

「大きな被害につながるのは『自分は大丈夫』『これまで大丈夫だったから今回も大丈夫』という正常性バイアス。この考えにとらわれることなく、率先して行動してほしい」と林氏は訴えていた。

参加者からは「トーナメント会場での水や食料などの備蓄をどうすべきか」といった意見が出るなど、関心の高さがうかがわれた。

今後30年間に震度5強以上の揺れに見舞われる確率

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地震調査研究推進本部
「確率論的地震動予測地図(2019年1月修正版)」より

(例)高知県防災マップ 津波浸水予測図

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高知県、土佐カントリークラブ、黒潮カントリークラブ周辺の津波浸水予測図。ゴルフ場は高台にあるので浸水しないが、周辺の道路が浸水する為ゴルフ場内での待機場所の検討も必要だ