トーナメント放送委員会セミナー
GTPAトーナメント放送委員会webセミナー
専門的な立場からネット中継の成果と課題を解説
メディアやギャラリーの入場が制限されたアース·モンダミンカップにおいて、唯一リアルタイムでの情報発信の場となったのがインターネット中継だった。GTPAトーナメント放送委員会セミナーでは、このネット中継がどのように行われたかについて、より詳しく、専門的な見地から説明された。
7月27日、「GTPAトーナメント放送委員会セミナー」が開催された。新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため、前週に行われたトーナメント事業委員会セミナー同様、Web会議ツール「Zoom」を使ったリモート形式で行われた。
テーマは「アース·モンダミンカップのネット中継制作について」で、株式会社ショットビジョン代表取締役社長の森昇平氏が、事業委員会セミナーに続いて演壇に立った。GTPA会員の放送局26社の担当者らを中心に81名(事務局含む)が参加し、前回より専門的で高度な技術解説となった。
アース・モンダミンカップのYouTube公式チャンネルは4チャンネル構成だった。1チャンネルはトーナメント全体を網羅した総合チャンネル、2チャンネルは注目ホールとされた3・6・11番の中継チャンネル、3チャンネルは9番を中心とした全ショートホールをカバーしたチャンネル、そして4チャンネルはホールアウト後の全選手のコメントを中継するインタビューチャンネルだ。
このインタビューチャンネルは、アース製薬の大塚達也会長が「選手全員が頑張っている姿を、多くの方々に見ていただきたい」と要望したもので、特にこだわったチャンネルでもあった。
「これらの4つのチャンネルを、キャスター1名とトーナメントに出場していない女子プロゴルファー11名のコメンタリー陣で進めました。1チャンネルはキャスターの実況を中心にコメンタリーが解説するという形をとりましたが、2、3チャンネルはコメンタリーだけで進行してもらいました。やはり大塚会長の『プロゴルファーのセカンドキャリアを応援したい』という思いを受けて行った試みでした」
このような実験的な取り組みはインターネット中継ならではと言えるだろう。この後、話はさらに専門的色彩を強め、より細かい中継技術の解説に及んでいった。
「予選ラウンドでは1番ホールに6台のカメラを設置した他、11ホールに固定カメラを配置。これらのカメラのスイッチングで、全選手のプレーをカバーすることができました。渋野日向子選手や鈴木愛選手など、注目選手の組にはワイヤレスのユーティリティカメラを用意し、先回りして撮影するなどしました」
今回のインターネット中継は、会場で撮影した映像を、4GのIP伝送で埼玉県三郷市の中継センターに送るリモート形式で制作された。これまでになかったこのシステムには、多くの放送関係者が興味を示していた。
「今回は4GのIP伝送を20回線、有線の光IP伝送を15回線用意して制作しました。何らかの原因で4Gの回線が使えなくなったとしてもなんとか破綻しないシステムを作り上げて臨んだつもりです。ワイヤレスカメラがクラブハウスから遠いホールなどに集中すると、電波の奪い合いになって回線が不安定になるなどのトラブルがありました」
今回は無観客だったため4G回線を安定的に使用でき、リモート形式での制作もスムーズに行うことができた。しかし、4G回線は一般公衆回線。観客を入れた場合、多くのギャラリーが一斉にスマホを使い、回線の状態が不安定になるなどの危険性をはらんでいる。
そのようなネット中継の課題をつまびらかにし、今後のトーナメント中継のクオリティを上げていくことは大切だ。放送関係者にとっては、大いに参考になったことだろう。
コロナ禍で行われたインターネット中継には、今後のトーナメント中継への多くのヒントが隠されていた。今回はそれを共有できたことで、非常に有益なセミナーとなった。