2014年LPGA小林会長インタビュー

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いよいよ2014年シーズン開幕!
日本女子プロゴルフツアーの将来展望

レギュラーツアーが37試合、ステップ・アップ・ツアーが12試合、レジェンズツアーが4試合のスケジュールで、レギュラーツアーの
賞金総額が32億5千万円と史上最高額の規模で開幕を迎える。その LPGAツアーの現状と今後の選手育成、
オリンピックまでを視野に入れた将来構想を小林浩美会長に語ってもらった。

─まず、レギュラーツアーとして過去最高の賞金総額規模で開幕を迎えますが。

 現在のこうした状況は大変にありがたく感謝の気持ちで一杯です。本当にお陰さまで賞金ランキング対象トーナメントは、1982年以降毎年30試合以上開催されており、長く応援していただいております。それはスポンサーの皆様のお陰であり全国で応援してくれているゴルフファンの皆様の根強い応援のお陰です。

 これまでいろんな選手が時代時代で活躍してきていますけれども、今、ツアーを引っ張っているのはジュニア時代からゴルフをしている世代が多いです。2003年の宮里藍選手や横峯さくら選手、諸見里しのぶ選手、有村智恵選手らが登場してから、もう10年くらいそれが続いている傾向です。と同時に個性的で強くてアピール性の強い選手が増えてきて、見たい選手がたくさんツアーの中にいるのが特徴だと思います。それは社会の多様化とマッチングしているのだと思います。私たちはプロスポーツ団体で、見てくださる方々が「さすがプロだね、すごいね」という試合内容や技術、プロとしての振る舞い等、それが社会の中で受け入れられるのと、主催や協賛、協力をして下さるスポンサーの方々がそこに何らかの価値をそれぞれ見出してくれているのではないかと思っています。

─1968年の賞金総額は95万円。それが今は32億。

素晴らしいですよね。その当時の月給と比較しても凄いです。日本という国がこれだけ発展しており、安全で安定しているからこそこうした仕事が成り立っているのだと感謝しています。

─一昨年は韓国や中国勢の強さが際立ちましたが去年は日本の若手が何人も週替わりでフレッシュなヒロインが台頭。意外性も盛り上がりに拍車をかけたように思いますが。

 実は、初優勝者は2009年以降、6人、6人、9人、9人と推移しており、毎年常に新しい選手が飛び出してきて勝っているというのが現状です。「女子ゴルフはいいね。次から次から若い選手が出てきて」とおっしゃっていただけるのは、そうしたところからだと思います。

─先の話になりますが、16年にリオ、20年に東京五輪があります。会長がいつも言われているグローバルスタンダードで力を発揮できる強い選手が出てくる環境、実践的な環境を作っていきたいという具体的な話を聞かせて下さい。

 グローバルな社会になり、もう既に世界のトップ選手はツアーをまたいで活躍し勝っています。世界のメジャーも各国ツアーのトップ選手を招へいし開催されております。そして今、世界の情報が瞬時に見られる時代になり、日本選手の世界での活躍や優勝が大きく期待されていると感じています。

サッカーのワールドカップやオリンピックなどを見ても同様です。そうした中、日本ツアーの選手たちがもっと世界で活躍していくために、勝っていくために何が必要か、となります。

日本ツアーの選手たちは才能にあふれています。その才能を伸ばすのは環境が大きいと私は自分の米ツアー経験から強く感じました。

 例えば競技日数。欧米の女子ツアーは世界メジャーだけではなく、普通のレギュラー大会でも8割方4日間大会となっています。4日間大会の戦い方はやはりそれを日常的にやらないとその戦い方は身に付きません。体力も必要ですし、戦略の立て方、あるいは総合的な技術力、精神力の配分等更なるものが必要となります。

 コースセッティングにしても、アンダーパーをガンガン出せるものからイーブンパーやオーバーパー勝負の試合まで、幅広いバリエーションがあって、たくさん経験することによって対応力が身に付きます。且つアメリカの場合国土も広いから高地、高原、リンクス、山岳、サボテン、砂漠といろんなシチュエーションの中のゴルフ場でやっている。日本はそれに比べるとどうしてもそうした種類が少なくなってしまう。

 あと、もうひとつ大きな違いとして芝質はスイングの精度に大きな影響を受けると私は感じました。日本は北海道以外ではほぼ高麗芝のフェアウェイです。アメリカでは高麗芝は全体の2%くらい。北部はケンタッキーブルーグラスとかライグラス等北海道と同じような柔らかい芝です。南部はティフトン芝が多いです。柔らかい芝はより精度の高いインパクトが求められるので、スイングの質がより要求されます。

 いろんな違いを克服しながら、才能ある日本ツアーの選手がより自分の才能を伸ばしていけるよう、また引き出せるようにできるだけ環境を整えたいと思っています。そうすることで、世界に出た時、あるいは世界から強い選手が入ってきたときに迷いや驚きが少なくて自分の力が発揮できると思うからです。



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─4日間とか距離などは日本でもできるけれども芝質だけはどうしようもない。

 昨年度より協会では、世界で勝つために「ツアー強化」に励んでいます。大会ごとにセッティングのコンセプトを決めていますし、4日間競技も増えています。練習環境をさらに整えることも大事な要素です。芝質は違う形で克服する方法もありますので、とにかく普段から準備をしていくことで、ここぞという時に力が十分発揮できる環境をと思い努力しています。

(写真提供:LPGA)

(写真提供:LPGA)

─グローバルスタンダードで戦える選手が多く出てくるためには何が必要か。

 ティーチング部門では、長い時間をかけて指導者の質の向上と育成に取り組んでいます。全国各地の地域に根差した素晴らしい指導者がいます。協会はそうした指導者をうまく世の中にアピールできていないので、そこにもっと力を入れたいと考えています。

 ジュニア育成では、夏休みを利用し全国各地で行っている「サマーキッズデー」は15年経ちますし、オリンピックを見据えて子供たちにそこを目指してほしい気持ちとゴルフの普及拡大を含めて試合会場で行っている「めざせ!世界」があります。また、親子でゴルフを楽しんでいただく「ファミリーゴルフデー」というのも2007年から行っています。2012年度からはLPGAジュニアゴルフコーチ資格付与を開始し、資格保持者は現在全国に40人います。成長する子供に合わせた指導法や人間形成などとLPGA独自のプログラムで、ジュニア育成に更なる力を入れています。また、JGA様はじめ地区のゴルフ連盟などと一緒にオリンピックに向けた取り組みが始まっています。選手がグローバルに戦うためには良い指導者は欠かせませんので、トーナメント部門とティーチング部門が両輪となって取り組むことが重要と思っています。

2014年開幕PRイベントが羽田空港で行われ、小林会長は詰めかけた多くのファンの方に応援をお願いすると共に今シーズンへ向けての意気込みを語った

2014年開幕PRイベントが羽田空港で行われ、小林会長は詰めかけた多くのファンの方に応援をお願いすると共に今シーズンへ向けての意気込みを語った

─ゴルフがオリンピック種目に復活するリオ、2020年の東京開催でのメダル獲得に向けた景気の良い話を何か。

 目指せ金メダルです。カナダカップ(現在のワールドカップ)で優勝したのは、初代LPGAの会長であります中村寅吉さんと小野光一プロです。あの感動をもう一度今度東京オリンピックで同じ場所で私たちが実現したい。その前に2016年のリオデジャネイロオリンピックがありますので、メダル獲得に向けて、今できることを確実にやっていきたいと思います。そのためのツアー強化を進めています。

─ワールドランキングでの目標は。

 15位以内に入る選手を増やして行きたいと3年計画で立てています。

─この機会に会長の方から言っておきたいご希望や目標はありますか。

 目標が高ければ高いほど道が険しいですが、スポンサーの皆様はじめゴルフ関係者も皆様にお力を借りて、着実に前進できるように鋭意努力していきたいです。

─さていよいよ2014年のシーズンが始まります。最後に何かメッセージを。

 私たちは今年試合数も賞金総額も増え、その分期待がさらに増していると感じています。重圧はありますがその期待に応えたい。大きな感謝の気持ちをもって、地道に進んでいきたいです。