LPGA小林会長インタビュー
リオで「メダル」。東京では「金」を!?
来年のLPGA創立50周年を迎えるにあたり、キーワードは「自立」。
トーナメント部門は、LPGAツアー38試合、ステップ・アップ・ツアー18試合、レジェンズツアー4試合で
4年連続の試合数増加と賞金総額も史上最高の35億3千万円の規模で迎える2016年。
更にリオ五輪での「メダル」獲得も視野に入れる今季の展望と協会組織運営のこれからのビジョンについて
LPGAを率いる小林浩美会長に伺った。
─ 過去最高の試合数と賞金総額の規模で臨む一年になりますが、見どころ、意気込みなどを
今年は、例年にも増して1打に対する執念やしつこさがよりプレーに出る戦いになるのでは、と予想しています。
今年も多くの大会スポンサーの皆様のおかげで、ツアー競技は1試合増えて38試合となり、そのうち4日間大会は11大会で、全体の約3分の1を占めるまでになりました。
選手にとっては、やりがいが一段と増すとともに、昨年以上に1年間戦う体力が必要になり、ツアー最終まで集中力を発揮できるための体力も合わせて必要となりました。体力が上がれば、ショットの威力も増し、より良いパフォーマンスに反映します。
そして、今年は8月にオリンピックが開催されるにあたり、各国の代表選手が決まるのは7月11日までの成績です。なので、世界ランキングで高得点を取るためには、より多くの試合で上位に入ることが条件ですので、優勝争いがより熾烈になり、1打に一喜一憂する場面が増えるのではないかと予想します。
─ リオのオリンピックに対する協会のサポートなどはどのように
2013年から「ツアー強化」を重点テーマとし、世界で勝つことを目標に、4日間大会の増加やコースセッティングの多様化、練習場環境の強化等に注力しています。オリンピックは個人戦で4日間大会です。4日間大会が今年は11大会に増えて、持続性のある技術力、体力、精神力、攻め方が以前にも増して習得できる環境になっています。
それは試合内容に表れており、予選カットのスコアや優勝スコアにも数字の変化として出ています。
また、選手の育成強化であるステップ・アップ・ツアーでも同時に強化策を進めています。元来、2日間大会でギャラリーを入れない大会というコンセプトで始まったものですが、選手がレギュラーツアーに行ったとき、すぐに活躍し、より多くの選手に勝って欲しいとの思いから、3日間大会を増やし、レギュラーツアーと同じ環境に変更しています。そしてギャラリーの前や、緊張する場面で、思うようなショットやパットをしてこそ、ツアー選手として活躍できるので、ギャラリー入場可を共催者の方々にお願いしております。
その結果、2011年には5試合だった大会が今年は18大会に増え、3日間大会も9大会になりました。さらに、オリンピックポイントを獲得できるためには、3日間大会が最低10大会が条件ですので、もう一息のところまで来ています。このステップ・アップ・ツアーもレギュラーツアーと同様に世界ランキング対象ツアーとなれば、その価値をさらに高められると考えています。今回、強化選手対象になっている選手は2月末に合宿を行います。リオの会場は、海が近くてリンクスコースということは分かっているので、まず風の対策と工夫に富んだアプローチショットが大事です。コースの情報を共有し、選手の皆さんに励んでもらおうと思います。それから、ヘッドコーチは男女とも丸山茂樹プロです。丸山プロの持っている技術や世界の大舞台での経験を教えてもらい、自分たちのさらなる向上につなげてくれたら嬉しいですね。
─ ずばり、メダルの可能性は
私たちはリオで「メダル」、東京では「金」を獲りたいと思っています。
─ ぜひ実現していただきたいですね
邁進するのみです。やはり1957年のカナダカップで中村寅吉さんと小野光一さんが優勝した同じ舞台の霞ヶ関CCで東京五輪は行われる訳ですから、63年ぶりにその時の再現を日本のゴルフ界でやらなければ誰がやるのという感じの意気込みではおります(笑)。
─ ワールドランキングでいえば、ランキングは試合ごとに変わっていますが、日本選手の技術レベルというところはどう見ていますか
リンクスタイプのコースなので、全英リコー女子オープンでの成績が参考になるかと思います。これまで多くの日本選手が出場し、経験値はありますので、どうやって勝つかは、選手個々で取り組む内容も違ってきます。オリンピックは個人戦の4日間競技で、各国のトップ選手しか出場しませんし、国を背負うというプレッシャーは初めての経験となるでしょうから、その意味では未知数だと思っています。
世界の大舞台で、自分の持っている力を最大限に発揮するためには、いかに自分の力を信じて突っ走れるかどうか、強い心で臨めるかどうかにかかってきます。オリンピックでは予想もできない大きな重圧がかかると思いますが、しっかり対峙して自分の信じるゴルフをしていただきたいです。
─ リオ五輪では宿泊や移動面での心配もあるようですが
宿泊に関しては、セキュリティの面からも利便性からも選手村を推奨しています。詳しい内容は、管轄団体であるJGAさんからの情報がとても大事になりますし、選手と随時共有していきたいです。
─ 来年はLPGA創立50周年を迎えますが、特別なビジョンや構想はありますか
あります。次の50年に向かってより唯一無二の団体となるべく、現在進めている組織力強化をさらに進めます。機能的な組織体にして、より自立して立っていけるような強い団体にしたいです。現在、外部の意見も聞きながらできる改革からすでに進めております。
─ 理事の改選が12月にありますが、外部から理事を迎えるという話はありますか
今回の選挙では理事構成もガバナンスなどについてもこれまでと同じ予定です。他方、以前から経営の専門家に入っていただき、協会をより強固にしたいとの思いは強いです。ただし、今の定款は外部理事にしても会員同様に選挙で決めなければなりません。理事会で推挙はしたが、選挙で落ちたというのではおかしなことになりますから、その点が大いに懸念される点です。なので、外部理事は念頭においてはいるものの、その点をどうクリアするか、です。
─ アメリカのLPGAはボード・オブ・ディレクターズということで、コミッショナーがいてティーチングのヘッドがいて、あと12人のうち6人が現役の選手で、宮里藍選手もボードに入りましたが、他の6人は外部の識者で構成されています。参考とされていますか
日本と米国では、歴史的にツアーの仕組みや協会の成り立ちが全く違います。ですから、構造的に同じにはならないので、今は日本的に進めることが大事だと思っています。例えば、営業部門ですが、選手権会場選択やステップ・アップ・ツアーでは私どもで営業をしているところもありますが、レギュラーツアーになると、専門家である代理店の方々がやられています。運営会社も専門会社があります。協会は競技関連と選手派遣管理が大きな役割となっており、日本のツアーは分業で成り立っていると感じています。でも、いろんな会社が関わっているおかげで、協会はこれまで大きく発展してこられたのだとも強く感じています。
欧米はツアー全体の管轄が協会にありますが、日本は主催してくださる大会ごとに管轄が分かれているところが大きな違いだと認識しています。
そうした中で、世界のツアーが共同開催する時代になり、協会を取り巻く社会環境や選手を取り巻く環境も大きく変化していますので、来年度50周年を迎えるにあたり、ずっと育ててもらっているばかりではなく、欧米ツアーに少しでも近づくべく、協会のさらなる自立が必要だと強く感じています。
そのためにもっとも必要なのは協会の組織力強化なのです。そのための外部の人材であり、構造の変化であると感じています。
現在、たくさんの大会スポンサーさんに応援をいただいており、多種多様で試合を開催する目的も考え方も違います。また、協会が2013年に社団法人から一般社団法人になってからは、いつ同業他社が出てきてもおかしくない状況になり、このまま唯一無二の団体となるべく次の努力をしなければいけなくなりました。
そのために2013年に立てたビジョンが「LPGAブランドの確立」であります。その骨子は、ゴルフ専門団体ならではの安心、信頼、クオリティの高さです。
特にLPGAの価値を上げることがツアーとティーチングにまたがる1023人の会員を守ることにつながり、ご支援をいただいている多くのスポンサーの方々には、これからも女子ゴルフを選んでいただけることにつながるのでは、と思っています。
これまで会員だけで経営していた組織ですが、私たちプロの強みを生かしながら、外の知恵も積極的に取り入れて、次に向かって発展を目指す、というところにすでに来ていると思うのです。私たち協会は、法律上2年に1度、理事選挙があり、長期計画で物事を遂行するには、脆弱性が潜んでいます。さらなる組織力強化は切迫していると感じます。
─ トーナメントセクション以外の動きとしてはどうでしょう
GBD事業部の重点テーマは「グローバルでのゴルフの普及と指導のフロントランナーになる」です。20年来、協会はジュニアに力を注いで来ましたから、そこを強みとして、もっと邁進しようと考えています。加えてシニアの人口層は多いので、シニアのための新規事業を立ち上げて、よりゴルフを楽しんでいただいて、心身の健康増進に良いというものの一つとして認知されるよう頑張っていきたいと思っています。
また、指導者の職域が日本はもちろんですが、さらにその行動範囲が発展してくる近隣諸国にも及ぶように、指導者能力要件ガイドも専門家を入れて作成中です。
─ 競技委員のレベル向上の課題について、その後はどうでしょう
この部門は進みが早くて、日本のLPGA競技委員をオリンピックに派遣すること、世界のメジャーに派遣することを目標に、育成強化に取り組んでいます。
選手同様競技委員も世界で活躍してもらうために、ここ数年米国や英国の女子メジャーに派遣して、実践を積んでもらっています。特に、英語での裁定が必須なので、英語のできる人から順に進めています。また競技裁定検定で最高レベルであるR&Aレベル3を取得することが世界で活躍できるためには必要で、その試験を今年は日本語でもできるということなので、複数の競技委員がその受験を目指して取り組んでいます。
とにかく、2020年の東京オリンピックでは、私たちLPGAの競技委員が一人でも多く採用されることを期待しています。
─ レギュラーツアーではオープンウィークは1週のみという中で、今後、トーナメントをどこで伸ばしていくのか。あるいは質を高めていくのかという点についてはどうでしょう
質で言えば、日本のメジャーに、世界の選手が出たい、と願う大会に高めていきたいと考えています。特に協会主催の日本女子プロゴルフ選手権は、日本女子オープンと並ぶ歴史と伝統を誇っています。プロになったら絶対欲しいタイトルがメジャーです。
米国メジャーは世界最高峰の位置付けです。今でこそ、全英女子オープンは世界の選手が出たいメジャーになっていますが、私がまだ20代のころは英国のメジャーであり、世界規模ではありませんでした。それがアメリカとの共催になってからは、その価値が上がり、出場したい、勝ちたいメジャーになりました。日本単独開催でも、世界の強い選手が日本のメジャーへ出場したいと思える位置に持っていきたいですね。そのためには、いろんな角度からの底上げは必要です。
─ プロスポーツの競技団体として、LPGAの会員が見せる競技の価値というものを今後さらに高めていかなければならないでしょうし、その余地は多分にあると思いますがどうでしょう
ツアープロは、お客様がお金を払って観る価値があるものかどうかで評価されます。なので、まずは「プロはすごいな」と思わせる技術力や試合内容、ファンサービスがとても大事です。
それに、スポンサーからは、いろんなスポーツがある中で女子ゴルフを選択していただけるような大会でなければなりません。そのためには、プロアマ大会でのホスピタリティがとても重要になります。スポンサーがついてくださり大会があること、そこに見てくださるギャラリーが来てくれることで、ツアープロという職業が成り立ちます。
ネット社会になってからは、あらゆるスポーツが国内はもちろん、世界の舞台での活躍が大きく期待されています。前にも話したように、私たちは「世界で勝つ」、という目的で進んでいます。ですから、一人一人が昨日の自分より今日、今日よりさらに明日、と進歩し強くなるように努力することで、先が明るくなっていくと信じています。
ツアープロは多くの人に感動を与えることができる職業であり、やりがいは大きいと感じています。
─ 最後に何か一言あれば
今年もたくさんの大会があることに、とても感謝しています。協会は微力ではありますが、大会スポンサーはじめ大会関係者の皆様、全国のゴルフファンの皆様に少しでも喜んでいただけるように鋭意努力してまいります。