ステップ・アップ・ツアー
ステップ・アップ・ツアーが強化され、
ますますグローバル化が加速する女子ツアー
今季から、LPGAのステップ・アップ・ツアーがそのシステムを大きく変えた。
と同時に、世界ロレックスランキング対象ツアーにも組み入れられることになり、ツアーの価値・レベルともに大幅にアップしている。
LPGAの「ツアー強化」策で、今後の女子ツアーがどう進化していくのかを探った。
最終戦の京都レディースオープン。雨の中、多くのギャラリーが選手に声援を送っていた
様々な企業の協力で世界ランキング対象トーナメントへ
ステップ・アップ・ツアーは、LPGAツアーに出場資格を持たない選手や新人を対象に、試合経験を積ませることによる育成・レベルアップを目的とし、1991年から始まったトーナメントだ。2000年代には年間10数試合が開催されてきたが、2011年には年間5試合にまで減少。しかもいずれも2日間大会と、低調なトーナメントだった。
LPGAでは2012年から「ツアー強化」を進め、世界で勝てる選手を育成することを目標に、国内ツアーに大きな改革のメスを入れた。その最大のターゲットがステップ・アップ・ツアーだった。
小林浩美会長は語る。
「ステップ・アップ・ツアーは30年近く、ギャラリーやテレビ放送も入れずに開催してきましたので、なかなか認知度が上がりませんでした。協会はツアー強化を掲げる中、選手の育成強化をさらに推進するために、ステップ・アップ・ツアーから改革を始めました。新しい枠組みの大会を作るとともに、スカイAさんにはテレビ中継をお願いしました。その結果、多方面から大きな協力を得ることができ、今につながっています。もともとスカイAさんに加入している人はゴルフが好きな人ですから、コアな層に直接響いたと感じています。これによって、下部ツアーの認知度がものすごく上がってきたのです」
このようなLPGAの取り組みが功を奏し、2011年5大会だったのが試合数は徐々に増え続け、2017年は21試合にまで増加。そのうち15試合は3日間競技になった。これにより、今年から世界ロレックスランキング対象ツアーにも組み入れられた。
「最低でも3日間競技が10大会以上ないと世界ロレックスランキングの対象ツアーになれない。2020年オリンピックが控える中、下部ツアーでもポイント加算されることが選手のモチベーションを上げますし、何よりステップ・アップ・ツアーそのものが世界で認知されますので、価値が向上すると考えました。そして、共催社様の多大なご支援で今年3月末から対象ツアーとなり、選手は世界順位を見据えたプレーにつながっています。」
アメリカやヨーロッパと同様、下部ツアーも世界ランキングの対象とすることができたことは、LPGAが目指すグローバル・スタンダードの大きな一歩となったことは間違いない。
高校野球でも見るかのような選手が育つのを見守る楽しみ
今季は、ステップ・アップ・ツアーの“ツアー制度化”を開始し、そのシステムも大幅に変更した。これまであった優勝者へのレギュラーツアー4試合の出場権を廃止し、代わりに賞金ランキング1位に翌年のリランキングまでの出場資格を付与。加えて賞金ランク2~5位まではサードQT免除、6~10位までの選手はセカンドQT免除など、年間を通して活躍した選手が翌年のレギュラーツアーで戦えるような仕組みへと様変わりさせている。
小林会長は続ける。
「ツアー強化の一環で、より強い選手を輩出するためです。1年間のトータルの成績で問われる実力、さらなるやる気を喚起する仕組みです。もともとステップ・アップ・ツアーは、すごく地元に根づいた大会が多く、地元還元でやってくださる共催者様がほとんどです。また、地元のアマチュア選手を育てるため、地元出身のアマ選手が出場する機会も増えています。ファンにはコアな方が多く、わたしが思うには、高校野球を見る感覚に近いと感じます。これからの人たちを見る楽しみ。育っていくのを見守る楽しみ。すでに個々の選手にファンがついているようです。」
応援していた甲子園スターがプロ野球で活躍するのは楽しいものだ。女子ゴルフの世界でも、同じようなことが起こり始めているようだ。
今季のステップ・アップ・ツアーは10月20日の京都レディースオープンをもって全日程を終了した。年間3勝を挙げ、賞金ランキング1位に輝いたのは谷河枝里子選手だった。
「来年、リランキングまではレギュラーツアーに出られるけど、いまの自分のレベルだったら予選を通過するかどうか。常に予選は通過できるようなレベルに上げていかないと」と谷河選手は言う。年間賞金ランク1位は大きな自信になったはず。3日間競技となり、大勢のギャラリーも応援するツアー。しかも世界ランキングの対象ともなれば、そのレベルも大幅に向上しているはずだ。谷河選手のレギュラーツアーでの活躍も期待できそうだ。
日本の女子ツアーはますます層が厚くなり、今後も多くの“予備軍”が現れてくることが予想される。2020年東京オリンピックも控え、世界で活躍できる選手も数多く現れてくるに違いない。
協会の「ツアー強化」策に、これからも注目していきたい。