トラメモ Vol.6「東海クラシック」第50回記念大会
Traditional & Memorial Tournament Vol.6
50年間ゴルフファンを楽しませ続け、
名勝負の数々を演出してきた東海クラシック
秋のビッグトーナメントのひとつ「東海クラシック」が、男子・女子ともに、今年50回記念大会を迎えた。男女同時開催という他に類を見ないユニークな形式でスタートし、世界のメジャー王者も数多く参戦。この大会の歴史を振り返るとともに、その魅力について紹介しよう。
男女がともに歴史を刻んだ大会
記念すべき第1回が開催されたのは、1970年。大阪万博に日本中が沸き立っていた頃だ。当時は、高度経済成長期にあり、ゴルフ場も建設ブームが起こり、ゴルフ自体も高級なものから、大衆化が進んでいた。同時に1964年の東京オリンピックを期に、テレビも普及し、家庭での娯楽の主役が「テレビ」という時代でもあった。「東海クラシック」は、まさにその時代、大衆のニーズに応えるべく、誕生したトーナメントといえよう。
また、今日の女子ゴルフ界の隆盛に繋がる基礎を支えた大会でもあった。当時、国内における女子プロゴルフトーナメントは、まだ試合数も少ない黎明期にあり、あえて男女同時開催、という斬新なスタイルで、女子プロ発展にも尽くしたからだ。
会場となったのは、名門三好カントリー倶楽部(愛知県みよし市)。第1回から半世紀が経つ現在も、男子トーナメントはここで開催されている。同時開催を行なっていた当時は、東コースを男子、西コースを女子で使用。優勝のカップ写真は、男女選手が一緒に撮影され、1枚に収まるのも、この大会ならではのものだった。練習場でも、男子プロに女子プロがスイング技術を教わったりする場面が見られるなど、今では味わえない独特な雰囲気が楽しめた。1994年、それぞれの独自性を高めるため分割開催となるまでは、長きにわたって、同会場で、ともに歴史を刻み続けた。
主催する東海テレビ放送(株)は、男女ともに50年間変わらず、大会を支え続けている。共催社や特別協賛社は、その時代により変遷してきた。男子では、2001年、日本コカ・コーラ(株)が主催に加わり「ジョージア東海クラシック」に、2014年からは、新たに(株)トップが冠スポンサーとなり「トップ杯東海クラシック」となっている。女子は、1990年に雪印乳業(株)が協賛し「雪印レディース東海クラシック」へ。2000年からは、(株)デサントを主催としてむかえ、「マンシングウェアレディース東海クラシック」となる。20年間親しまれてきた大会名称を、節目となる今年、「デサントレディース東海クラシック」と改称した。
時代を代表する名プレーヤーたちの活躍
50回目を迎えた、ということは男女合わせて100名の優勝者を輩出し、100通りの名勝負が繰り広げられてきた、ということになる。歴代優勝者を眺めると、その時代をリードした精鋭たちが名を刻む。
国際トーナメントとしても、長年注目され続けた。メジャー王者を男女あわせて30名以上をも招待してきた。世界のスーパースターVS日本の実力者たちの攻防は、会場のみならず、ブラウン管を通して、全国のゴルフファンを熱狂させた。
男子では、トム・ワトソン、ベルンハルト・ランガー、フィル・ミケルソンなど、 誰もが知る名手たちが参戦し、AON(青木功・尾崎将司・中島常幸)をはじめとする日本選手と激闘を繰り広げた。
女子では、1973年、当時一世を風靡していた世界中のアイドル、ローラ・ボーが初出場すると、ギャラリー数が倍増し、社会現象を巻き起こした。また、大会初期は、樋口久子(現LPGA顧問)が1971〜1973年、1975〜1977年にそれぞれ3連覇を2度達成する快挙を成し遂げた。1977年の優勝は、日本人初のメジャー制覇となった全米女子プロ優勝直後であり、話題を集めた。
近年では、2009年大会で、当時18歳だった石川遼が、ドラマティックなプレーを連発し、1打差の混戦を制し、優勝。新時代の幕開けを予感させた。スコアを大きく落とすも、イーグルで挽回と、観衆を魅了。最終ホール、1打差の攻防戦の中、ピンそば30センチに着弾させ、会場には史上最大級の絶叫がなり響いたという。
歴史の主役は、選手ばかりではない。名勝負を彩った三好カントリーの魅力もかかせない。昔も今もプロを恐れさせる三好名物、西コース16番「魔のパー3」。グリーン左サイドが高低差7メートルという大きな崖になっている。右サイドはバンカーが広がり、ラッキーはない。ティーショットを崖下に落とし、優勝争いから脱落した選手は、枚挙にいとまがない。
今年は、7番ホールをパー5からパー4へ変更。昨年までのバーディホールが、最難度のホールに生まれ変わり、選手を苦しめた。名門の歴史に甘んじず、時代にあったコースセッティングに挑む姿勢が、いつの時代も、選手たちの三好カントリーへの飽くなき挑戦意欲を掻き立てているのだろう。(文中・敬称略)
50回記念のテレビ特番が多数放映
今年は男女ともに50回を記念するイベントやオリジナルグッズ販売が行われた。また、東海地方を中心とするテレビ放映と連動する企画も多数あり、大会をおおいに盛り上げた。ここで、その一部を紹介しよう。
ず、男子では、歴代優勝者4人による、5ホールだけの夢のペアマッチ「東海クラシックメモリアルカップ」を開催。大会最多勝となる3勝をあげた倉本昌弘プロが、石川遼プロとペアを組み、ベテランとして存在感を放つ伊澤利光プロと片山晋呉プロのペアと、勝敗を競った。真剣勝負の中に、軽快なトーク合戦もあり、ギャラリーの笑顔を誘っていた。
また、男子ツアーとしては10年ぶりの「ドライビングコンテスト」を復活させ、注目を集めた。飛ばし自慢の参加プロ10名による競演に、ギャラリーも一体となって、その豪腕に沸き立った。「ぜひ、来年も観たい」とファンからは早くもリクエストされるほど好評を博した。どちらも大会期間中、ダイジェスト放送でその模様が紹介された。
女子は、テレビ企画「女王を目指せ!人気女子プロがコース攻略に挑戦」を記念イベントのひとつとして実施。4名の女子プロが、大会会場となっている新南愛知カントリー美浜コースの設計者でもある樋口久子プロから出されたミッションを解決しながら、コース攻略のヒントを紹介しつつ、大会PRを務めた。
他にも、過去の名シーンを一挙公開し、これまでの歩みを紹介する「50年史特番」や、全5話のスペシャルインタビューからなるミニ番組「あのシーンをもう一度」など、開催に合わせ放映された。
また、両会場には、49回の歴代優勝者たちの大型パネルが設置され、その功績と歴史を伝えた。多くのギャラリーが興味深く見入り、その時々を懐古する様子が見られた。
市井の人々から愛される大会
記念すべき第50代チャンピオン誕生のシーンは、偶然にも男女対象的なものとなった。男子は、最終組トップでスタートしたショーン・ノリス選手(南アフリカ)が混戦を制し、感きわまる涙の優勝となったが、女子は、渋野日向子選手が8打差をひっくり返す大逆転の末、代名詞となるスマイル満開で優勝杯を掲げた。今年も多くのギャラリーが来場し、大会を楽しんだ。
東海地方では、東海クラシックのニュースが流れると「今年も秋が来たね」という感覚になるという。半世紀にわたり、地元に密着し、地元ファンを大切にしてきたからこそ、人々の生活に大会が根付き、恒例行事となり、いつの間にか、秋の季語のようになっていったのだろう。長年にわたり、時代の変化に翻弄されながらも、主催者をはじめ、スポンサー社、ゴルフ場など、関係する全ての人たちが、大会を守り続け、次世代へバトンを渡し続けた。その弛まぬ努力が根底にあることは言うまでもない。
さらに50年先の1世紀を目指して、今後もゴルフ界の中心に立ち続けてほしい。
「デサントレディース東海クラシック」「トップ杯東海クラシック」、ともに今年で第50回という記念の大会を迎えることができました。ご支援をいただいている皆様に改めて御礼を申し上げます。
さてデサントレディース東海Cですが、今回のトピックは何といっても渋野日向子選手の出場。噂に聞く“シブコフィーバー”が果たしてどんなものなのか。私たちも、シャトルバスの増便、ギャラリー駐車場とトイレの増設、警備スタッフの増強など、ギリギリまで対応に追われました。
結果としては心配された大混乱はなかったのですが、新南愛知CC美浜コースに詰めかけたギャラリーは3日間トータルで約25,000人、昨年より5,000人ほど増えました。
その目の前で渋野選手がやってくれました。最終日、8打差を逆転しての優勝。高々とトロフィーを掲げるシブコスマイルが記念大会に大きな花を添えてくれました。
一方、トップ杯東海Cでは50回を記念したイベントをいくつか開催しました。その一つが当週の月曜日に開催した「トップpresents東海クラシックメモリアルカップ」です。
倉本昌弘プロ、伊澤利光プロ、片山晋呉プロ、石川遼プロの歴代優勝者を招き、2チームに分けてフォアサムのストローク戦に挑んでいただきました。普段見られない選手の表情や、テレビ収録のラウンド解説をお願いした青木功JGTO会長との軽妙なやり取りなど、ギャラリーの皆さんにも楽しんでもらえたのはないでしょうか。
本選では、三好CCの皆様が渾身で作り上げた素晴らしいコンディションの中、最後に決めたのはS・ノリス選手でした。キャディを務めた弟とともに亡き父に捧げる涙の優勝でした。
男女ともに改めて感じたのは、当たり前ですが選手それぞれにドラマがあり、様々な思いを抱えながら戦いに挑んでいるということ。それがトーナメントの魅力を作り上げているということ。
テレビ局としてそんな魅力も発信しながら、今後も微力ながらゴルフ界の発展に貢献していきたいと考えています。
東海テレビ放送(株) 事業局 局次長 田中健一郎