GTPAトーナメント放送委員会座談会
ゴルフトーナメントを盛り上げていくために、
メディア、協会、選手が一体となった取り組みを
GTPAトーナメント放送委員会では、東京キー局のゴルフ中継責任者、そしてJGTO小山和顕部長、LPGA原田香里副会長にもお集まりいただき、トーナメント中継の現状と改善点、そしてゴルフ界をより発展させるためにはどうすればよいかということをテーマに座談会(司会:テレビ東京山元氏)を開催した。参加いただいた7名からは多くの忌憚ない意見が提示され、実り多い話し合いとなった。
日本人選手が活躍できるよう
新たなシステムが必要か
テレビ東京・山元氏(以下山元) まず私のほうから日程についてご意見を伺います。男子ツアーの国内開幕戦は女子に比べると1カ月遅くなっています。これについてはいかがですか。
JGTO・小山氏(以下小山) 日程については数年前からの懸案です。もちろん試合数を増やしたいのですが、現状6~7月に空き週が多く、とは言いつつ海外メジャーもあって主催者にとっては開催しにくい時期です。将来的には国内開幕戦をマスターズより前の3月の中旬に、2戦目も前倒ししたい考えです。
山元 では、次に視聴率の話を。男子ツアーの去年の平均視聴率(関東・日曜)は4.1%、今年は3.0%です。女子は去年が4.8%、今年が4.2%(いずれも6月5日現在。去年は同時期まで)。我々としては残念な結果ですが……。
日本テレビ・実成氏(以下実成) やはりトップ10に日本人があまり入ってこないことが大きな要因でしょうね。PGAツアーが、ウェブドットコムツアーに参戦しない人にはPGAツアーのライセンスを発行しなくなり、海外選手の参入が難しくなりました。日本ツアーでも若い日本人選手にもっとチャンスを与えることを考える必要があるのではないかと思います。
小山 PGAツアーのようなシステムは参考にできると考えており、JGTOでも2019年を目途に出場資格の変更を検討しています。新しい出場資格はシード選手には少し厳しくなり、チャレンジトーナメントからの枠を多くします。なおかつQTの枠は少し狭くするものの、QTからツアーやチャレンジに出場しやすくなるように変える方向です。
実成 鎖国政策だけではだめで、アジアツアーとの共催はもっと増やす必要があると思います。
小山 アジアとの共催は現在4試合あり、今後はもっと増やそうと話し合っています。目標としては2~3月にアジアで2試合、6~7月に日本で2試合くらい増やせないかと。
山元 池田勇太選手は昨年の賞金王でしたが、今年はあまり出ていませんね。
小山 彼はワールドランキング50位以内に入っていて(6月5日現在)、それだけいろいろなPGAツアーの出場資格があり、世界に挑戦しているところです。青木功会長をはじめ、協会としては彼を応援したいという考えです。谷原秀人選手もそうですが、去年の1位、2位がいないのはツアーとして痛いところですけどね。
テレビ朝日・井上氏(以下井上) 池田選手にせよ谷原選手にせよ、日本の選手が日本ツアーで育ち、ヒーローになってアメリカに行くことは、素晴らしいことです。視聴率低下の課題もありますが、彼らの夢を重視すべきだと思います。
フジテレビ・岡氏(以下岡) 男子ゴルフ界の大方針として、選手をもっといろんなメディアに出していこうというような動きはあるのでしょうか?もっと選手のキャラクターを売り出していければいいなと思うのですが。
小山 選手の価値を上げていきたいので、いろいろなメディアにプレー以外の部分もどんどん露出していきたいと思っています。今年からJGTOはフェイスブックやインスタグラムを始め、フォロー数が増えています。そこではロッカールームでの面白い映像だとか、選手同士の小技面白ネタ集のようなものも作っています。そういうもので、もっとゴルフに関心を持ってもらいたいと考えています。
局内の情報交換を密にすれば
さらに試合を盛り上げられる
山元 女子ツアーの視聴率も去年より下降していますが。
LPGA・原田氏(以下原田) 若手選手の活躍もあり入場者数は増えているのですけどね。
山元 セクシークイーンなどと、ニュース番組などで取り上げられるのはどうなんでしょうか?
実成 私はいいと思いますよ。いろいろな人が関心を持って、ゴルフを見るきっかけになれば。
小山 ゴルフファン以外の人が注目するというのはうらやましいですね。
実成 男子は、もっとプロゴルファーのすごさを出すようなフィールドがあってもいいと思います。一試合くらいは思い切り飛距離勝負のコースセッティングにして、たとえばチャン・キムがティーショットで350ヤードくらい飛ばすと「おーすごいなあ」とかね。
小山 C・キムのドライバーなんて、まさにあれはショーですからね。「C・キムはすごいよ」というようなことを、各局内でもっと情報提供を密にしていただけると嬉しいですね。「今週はこの選手だ」ということをゴルフ担当の方が社内で発信すれば、報道でも試合が盛り上がるようなニュースを流すことができるかもしれません。
岡 女子のトーナメントでやっているドラコン大会とかできないのでしょうか?
小山 今年はKBCオーガスタで、アプローチコンテストなどを計画してます。
山元 そういった面白い企画をギャラリーだけで終わらせないことですね。女子ツアーの活性化はどうでしょうか。
原田 若い選手が出てくることが女子ツアーの活性化につながっていると思います。若手プロでは、青木瀬令奈選手がヨネックスレディスで初優勝を飾りました。川岸史果選手、堀琴音選手らもあと一歩で、どんどんいろんな人が出てくるといいなと思っています。
実成 若手プロは歓迎しますが、高校を卒業したプロテスト予備軍の選手が出過ぎるのはどうかと思います。高校生のアマチュアはいいと思いますけどね。
原田 そこは少し考えないといけないですね。
TBS・岡田氏(以下岡田) 男子はもっとアマチュアの出場枠を増やしてもいいんじゃないかと思います。たとえばテレビ局にアマチュアの出場枠をあげれば、ニュースに出たりして話題性が上がるのではないかと。
実成 マンデーからの枠を増やすことはできませんか?シンデレラボーイが出やすくなります。
井上 ジュニア枠も増やして、若きスター候補生をどんどん出してほしいですね。
山元 他にJGTO、LPGAに対しての要望などはありますか?私としては打つ直前までキャディが後ろに立っていることが気になります。
小山 それは2019年にゴルフの正式ルールとして禁止になるように検討されているみたいです。
岡田 打つ順番も準備ができた人から打っていいということになるとか?
小山 はい。ただトーナメントではいろいろな問題があるので今まで通りになると思いますが、ゼネラルルールは準備ができた人からということになるかもしれませんね。
岡田 それは中継局にとっても影響が出そうですね。
小山 協会がいろんなローカルルールを付けないといけないと思いますが、2019年からゴルフのルールは大きく変わってくるかもしれません。ピンを挿したままパッティングしてピンに当たって入ってもOKになるとか、ロストボールを探せる時間は5分から3分になるとか。グリーンではスパイク跡も直せるようになるし、ラテラルウォーターハザードやスルーザグリーンという言葉がなくなるなど、ゴルフ用語自体も変わってくる可能性があります。
スロープレーの対策は?
グリーン上で選手とキャディがカメラにかぶる事については?
小山 プレーのペースに関してはゴルフ規則に則ってローカルルールとして選手に配布しています。これはLPGAさんも同じだと思います。当然、他の人に迷惑をかけている人は計測してペナルティや罰金を与えています。
原田 グリーン上でカメラにかぶる件は、分かっていればよけると思うのですが、プレーに集中して忘れてしまっているのだと思います。固定カメラにはなかなか意識がいかない感じですね。
インターネット時代にあって
試合速報停止の影響は?
小山 試合速報の停止についてご意見を伺います。今は地上波からBS、CSに移行して生放送が多くなっています。その中で、速報を止めることがどこまで視聴率に響くのか。ひょっとしたらプラスに伸びるのではないかなど、いろんな意見を耳にしますが。
実成 協会の速報で出さなくても、今は他のネットメディアで優勝者が出てしまいますから、速報で視聴率は変わらないだろうと思うし、私は止めなくてもいいと思っています。ただ営業的な側面からすると、結果が分かっているものに対してお金をいただく提供スポンサーに失礼にならないかと懸念します。
岡田 かつて宮里藍選手がダイキンオーキッドで初優勝した時に、他局に速報を出されたことがありました。オンエア前に「宮里、優勝!」って。
山元 でも、それを見て「見なきゃ」と思う人もいますからね。
岡 たとえば、もしジャンボさんが勝ったのであれば速報を出してもらったほうが見るかもしれない。でも外国人選手が10打差リードで勝ちましたなら見ないかもしれない。視聴者目線でいうと、選手のキャラクターによって変わるのではないでしょうか。
実成 速報の件に伴って生中継化の課題も出てきます。ゴルフは生中継じゃなきゃいけないとやってきたんですが、日曜日は生中継で15時半に終わるより、16時とか17時半まで放送するVTRのほうが数字的にはいいんですよ。
小山 JGTOとしては、地上波で生中継をやって、プレーオフなどでこぼれたらBSにシフトするという方法がいちばんありがたいのですが。
山元 ただそれは、地上波局とBS局との関係があって、どの局でも簡単にシフトできるわけではないんですね。
小山 なるほど。番組中では、今後出てくる若手の選手や、外国人でも強い選手、ビジュアルのいい選手などを積極的に紹介していただきたいなと思います。また、その日の好プレー集みたいなのもどんどん取り入れていただけるとありがたいですね。珍プレー集でもいいのですが。
山元 今はゴルフ番組自体が減少していて、好プレーをまとめて紹介できるような場が少なくなっていますからね。
小山 それから中継の解説者はだいたいプロゴルファーですが、正しいゴルフの知識という意味では、たとえば誰か一人の専門家を待機させて、問題が起こった時に現場から正しいルール、処置を伝えるというシステムがあるといいかなと思います。
実成 副音声を使うという方法もあるかもしれませんね。かつて日本プロの時に競技委員にマイクを仕込んで、何かあったらオンできるようにしておいたんですが、結局何もなかったということもありました。いろいろと難しい問題もあると思います。
R&A、USGAで課題となった
ビデオでの判定については?
小山 去年のフジサンケイでボールが動いたとかがあって、翌日は電話での問い合わせがすごかったです。そのような場合、競技委員がビデオを見たり、選手と一緒に現場を見たりしてジャッジします。今の画像はものすごく鮮明なので、わずかでも動けば分かります。でも、選手からはボールが動いたことが分かっていないこともあるわけです。そこまではゴルフ規則でも言及されていないので、競技委員がその場でジャッジするしかないと思います。
山元 「ビデオを見せません」という局はないですよね。
実成 うちは一切見せていないです。JGTOもLPGAも。というのは、角度によっても見え方が違うし、その選手だけが撮られていて、他の選手は撮られていないという不公平が生じますから。
井上 うちもオンエアしたもののみです。
実成 1番ホールから撮影していればいっぱいありますよ。動いたとか、ボールマークの位置がおかしいとか。それをいちいち言っていたらテレビが監視役になってしまいます。
山元 これは各社の判断ですね。たくさんの意見が出ましたけど、今後のトーナメントで運営面・放送面で生かされていくように期待しています。本日はどうもありがとうございました。