GTPAトーナメント放送委員会レポート
〜JGTOコースセッティングアドバイザーと放送メディアが意見交換〜
2016年12月8日、GTPAトーナメント放送委員会が開催された。全国の放送局のトーナメント放送制作責任者ら19名に加え、JGTOのコースセッティングアドバイザーを務める佐藤信人プロ、田島創志プロの2名を迎えて開催した。ゴルフトーナメントをよりエキサイティングなものにし、映像コンテンツとしての価値を高めるために、選手とメディアはどのように連携していけばいいだろうか。委員会の様子をレポートしよう。
プロゴルファーによるコースセッティングが
トーナメントを面白くする
GTPAトーナメント放送委員会は、男女ゴルフトーナメントを制作・著作している全国の放送局の番組制作責任者が参加する委員会。トーナメント放送のレベルアップを目指し、さまざまな課題の解決や情報共有などを行っている。
今回の大きなテーマは、JGTOのコースセッティングアドバイザーによるコースセッティング。JGTOはトーナメントをさらに面白いものにできないかと、2016年からプロゴルファー自身がティーの位置やホールロケーションなどを決める改革を進めている。この改革を受け、トーナメントを放送するメディアの担当者らが、中継をさらに魅力あるものにするためにはどうすればいいかということについて話し合う機会となった。
冒頭、佐藤信人プロからコースセッティング担当者導入の経緯について説明があった。「元々、選手からアンフェアなカップ位置などについての苦情があり、選手、あるいは選手に近い人間がカップ位置を決めたほうが面白い試合ができるのではないかという声があった。そこで青木功会長のリーダーシップの下、6月の日本ゴルフツアー選手権からスタートし、8月のRIZAP KBCオーガスタくらいから本格的に導入されるようになった」
試合ごとにコースセッティングアドバイザーを決め、その担当者がホールロケーション、ラフの長さ、ティーグラウンドの位置などをチェックし、決めていくという。現在、コースセッティングアドバイザーには、佐藤信人プロ、田島創志プロをはじめ、渡辺司プロ、田中秀道プロ、細川和彦プロらが名を連ねている。
コースセッティングで
日本ツアーのレベルも上がっていく
田島創志プロからは、ホールロケーションが選手に与える影響について説明があった。
「HEIWA・PGM CHAMPIONSHIPでは、例年より1ヤードくらい内側にカップを切りました。それにより選手は、グリーン中央ではなくピンをデッドに狙いたくなり、結果的にいい試合になりました」
また、これまでのトーナメントとは一線を画すコースセッティグにも挑戦したという。
「太平洋マスターズなど伝統ある大会でも、米ツアーなどを参考にしてこれまでとは違ったセッティングを目指した。それが松山英樹選手の2位と7打差をつける23アンダーで優勝という結果につながり、今の米ツアーのトップ選手と日本ツアーの選手とのレベル差が出たのではないかと思う」
コースセッティングアドバイザーの導入は、日本ツアー全体のレベルアップにもつながる可能性を感じさせた。
これに対してメディア側からは「選手同士がもっと競り合うようなコースセッティングはできないか」との質問があったが、佐藤プロからは「それは難しい。ゴルフは強風や深いラフなど、コースが難しい状況になればなるほど実力の差が出る。プロにとっては特にグリーンの硬さがポイントになるが、硬くて難しいからといって易しいところにカップを切ることはない。『世界に通用する選手を育成する』というのもJGTOの理念の一つなので、今後も『リスクと報酬』を考えながらセッティングしていくことになると思う」という回答だった。
コースセッティングの妙を
どのように視聴者に伝えるか
JGTOのコースセッティングに関する改革に対して、メディア側からも盛んに意見が出た。
「プロゴルファーがコースセッティングすることはとてもいいことだ。ただ、それをテレビでどのように表現していくかは難しい。プロが解説席でどんどん話してほしい」
「最終ホールで3打差を追いつけるようなセッティングを意識してほしい。3打差というのはバーディー対ダブルボギー、イーグル対ボギーで追いつけるスコア。視聴者には、そんな期待感を持たせたい」
「グリーンだけでなく、ハザードにも目を向けてほしい。プロにとってバンカーがハザードになっていないことも多い」
「コースセッティングの下見を、テレビの下見とスケジュールを合わせてやってはどうか。情報交換すれば、映像的にも面白くなる」などの発言が相次ぎ、トーナメント放送委員会は盛会のうちに幕を閉じた。
今後、選手側とメディア側がより密に連携することで、さらにエキサイティングなトーナメント放送が実現されていく予感がした。